著明に拡大した肺動脈内に一過性に"モヤモヤ"エコーを認めたWaterston術後20年を経過した単心室の1例

伊賀幹二、泉知里、*山下宗人、*高橋秀一、*吉村さゆり、堀健次郎、松村忠史、玄博允

抄録

症例は32歳の女性.12才時に左室型単心室、高度肺動脈弁狭窄症の診断にて Waterston の手術を施行した.術後ヘマトクリット値の減少、症状の著明な改善がみられ、以後症状に変化はなく放置されていた.31歳時、検診にて両肺門部異常陰影を指摘され本院に精査目的のため入院した.術直後に聴取された連続性雑音は聴取されなかったがヘマトクリット値は術直後と変わらなかった.ドップラー心エコーにて大動脈からWaterstonのshuntを通じて、著明に拡大した肺動脈へ収縮期に2m/s、拡張期に1.5m/sの血流がみられた.肺動脈の圧は測定できなかったが、術後のpulmonary vascular diseaseの進行が考えられた.その後、気管支炎罹患時、強い呼吸困難とPaO2の低下がみられ、拡大した肺動脈に"モヤモヤ"エコーがみられた.しかし、気管支炎が治癒し、PaO2が以前のレベルに戻った時点では"モヤモヤ"エコーはほぼ消失した."モヤモヤ"エコーの出現、消失は臨床症状と一致し、肺感染時の肺血流の低下を反映しているものと思われた.